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戯言私信
絵をかいたり日記だったりまぁとにかく色々かきます。
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2008-08-18 [Mon]
いきなりの萌え


書きにきました(笑

この間の書き途中のはやめました…


仁王柳生の28のお題



【二人】もしくは不器用な二人。



女に振られた。
付き合ってまだ一週間だった気がするけれど、いつ付き合い始めたとか気にしない性質だからもしかしたらまだ三日だったかもしれない。
俺は色々な女と付き合ってきたし飽きたからと言って捨てたこともあった。しかしこんな俺でもひとつだけ許せないのが浮気だ。
付き合うなら俺だけを見てろ。
俺は、付き合ってきたどの女も好きではなかった。それは断言しても良い。
それでも俺は、俺を好きだと言ったヤツに対しての独占欲だけは人一倍でそいつが他人と喋ってるだけでイラついたりもした。
今回の女にはそれが、重い、と言われて振られた。
私の事好きじゃないくせに。
さいてい、と罵られ頬に張り手をくらった。久し振りの感触。すごく不愉快だ。

「………」

俺はおもむろにポケットに突っ込んでいた携帯を取り出して、ぱか、と開ける。スライド式にしようかと携帯ショップで悩んだ事を思い出して、やっぱあっちにしとけば良かったかなと思った。だって、あいつは小型のスライド式で器用に使いこなしていた。俺は羨ましかった。
かちかちと操作をしてある番号に発信する。
呼び出し音を静かに聞いて、この音があの穏やかな声に変わる瞬間を心待ちにした。
『もしもし』
機械音が終わりを告げ、俺の望んだ独特な優しい声。女にはこんな声絶対出せない、高くも低くもなく聞いていて気持ちの良いくらいの落ち着いた響き。
「…あんね、女に振られたとこなんよ。なぐさめて」
『また振られたんですか?あなたはモテるくせにすぐ振られますね』
電話越しに溜息が聞こえる。あと、扇風機の音。風と、風鈴。
「なぐさめて、って言ったじゃろー」
『私は了承してませんが』
「なまいきな子ぉやね」
『あなたほどわがままではありませんが』
こいつは、俺が振られてる間何してたのだろう。部屋で勉強があいつらしいとすぐに答えは出るけれど、俺は少なからず願ってしまうんだ。どうか、想ってくれていますように。
『…明日、私の家の近くで大きな花火大会が催されるのですが。行きますか?』
心配そうな色も慰めているような色も見受けられない声音に、でもほんの少し緊張が窺えた気がした。
耳元で少し掠れる音。全神経をそこに集中させて、一音も聞き逃さない。もっと、聞いていたい。
「なぐさめてくれんの?やさしー子ぉやねぇ」
お父さん嬉しかよ、と笑えば、あなたに育てられた覚えはありません、と一蹴され、向こうも微かに笑った。

『それで、行きますか?』
これを答えたらこの声は俺を突き放して、勉強やらを再開するのだろう。
「うーん、あんねぇ、」
俺はこの声が好きだった。俺を唯一尊敬してくれた、俺を見捨てないでくれたやさしい声。
「俺ね」
でも本当はそんな理由もなしにひたすら、
「おまえんことすきなんよ」
もうずっと。
その声に、お前に呼ばれることだけが特別に思えていくつ目の夏なのかわからない。俺はかぞえない性質なんだって。
電話の向こうに本当にあいつが存在していて俺の話を聞いているのか、一瞬疑い、あいつの妹の「お兄ちゃんどうしたの」という声に安心して、いつの間にか緊張していたらしい足から力が抜けて座り込んだ。
目線を上げるとあいつが言った花火大会のポスターが見えた。
座り込んだマンションから出てきた女の人にちょっと怪しい人を見る目でじろりと睨まれてしまったが、軽く会釈しておいた。もう薄暗くなってきたから不審者と間違えられたのだろうか。ヒールの音がエントランスに甲高く響いた。
「……あの、だからな、花火大会―――」
『仁王くん。今どこにいます…?』
十秒ぶりくらいに聞いた声は確信を持って訊いていた。
「さぁ?どこじゃろ、ここ」
『そこに居てください。あ、携帯、切らないで』
うん。君が言うなら俺はなんでも守る。
だから、早くきて。俺の手にも早く落ちてくれば良い。は、という息遣いにすら俺は耳を傾け、階段を駆け下りる音が迫る。

「『におう、くん』」
「やぎゅう」
確かこいつの家は九階だった気がするけれど、わざわざエレベーターも使わず階段で降りてきたのか。
生の声と機械を通した声が重なる。
「俺、告んのは初めてじゃ。俺は重いらしいけど絶対に裏切らん。お前だけは裏切らない」
俺は振り返らなかった。柳生は階段を降りてから俺の背後で携帯越しなのか実際に話しているのかわからない曖昧な境界線に立っていた。
ざり、と音がして俺は目を瞑る。
「『私は』」
俺が羨ましいと思った小型の携帯にもしくは俺に、柳生は語りかける。
やっぱり羨ましかった。いつでも柳生の傍にいるあの、携帯。あれになりたかった。
「『仁王くんと、行きたいです』」
花火大会、と小声で付け足されて、俺は目を開ける。
罵詈雑言も聞こえなければ、謝罪も、そして甘い言葉すら聞こえなかったけれど俺はそれだけで十分だった。
やっと振り返る。
「花火大会、行こっか」
耳元でぷつんと音がした。
「はい」
柳生は『通話を終了しました』と画面に表示されたその小型の憎いやつをするりと手放して、俺の首に腕をからめた。猫っ毛が頬に触れて、手でわしゃわしゃやると、やめてください、と涙声で止められた。
「あのね。俺お前が誰かとしゃべってんのさえムカついて仕方ないし、お前が片時も俺ん事考えててくれなきゃヤなんだ。それでもいい?俺でもいい?」
女には嫌だと言われた。
柳生は、

「…仁王くんじゃなきゃ嫌です…」

ぽつりと耳元の唇が囁いた。
今はその大好きな声さえ塞いで、俺達は初めて手を繋いだ。



(おまけ)
「にしてもわからんのー。どうしてここだってバレたん?発信機?」
「そんなもの誰がつけますか…。ヒールの音が響いていたでしょう?あの女性は母の友人で、」
「あかんよ。女、男もだけど、俺以外すきになったら許さんよ」
「なりません。その発想が意味わかりません」
「発信機とか盗聴器とかつけてもええ?」
「意味がわかりません。あなたがつけるなら私もつけますよ?」
「あ!ええなそれ!携帯いらず!」
「…そういった意図で盗聴器を使わないで下さい」
「柳生が自慰しとる時も俺が全部聞いちゃるけん」
「遠慮します!!てゆか、しません、そんなこと!!!」
「じゃあ俺が全部やってやるからひとりでシちゃあかんよ?シたくなったら俺に言うんよ?」
「は、はい…??」(やるって何を…)
「決まりじゃな☆」(これで柳生のおねだりが聞けるー!!)


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