2007-12-12 [Wed]
リハビリ…
【嘘つき】
兄は、彼女をよく変えていた人だった。
何回か家に連れて来た事もある。ただし、三回以上は見たこと無いけれど。
「兄ちゃん。最近、彼女つくらない…んだね?」
突然そう切り出した僕をきょとんとした瞳でみつめ、次の瞬間苦々しい顔になって「いや…」とお茶を濁した。
「真面目になろうと、思って」
「? 大学進学の為に?」
勉強がやはり忙しいのだろうか、とふと心配になる。
「いや、今度付き合う時は本気で…と思って」
「………へぇ」
聞かなければ良かった。
僕の想いは叶う事はないとわかっているけれど、どこか期待してしまうのは兄が…優しいからだ。
女の子にだらしのない人だけれど誰にでも優しい人。
血の繋がらない僕に本当に良くしてくれて、口五月蠅い義父の親戚から庇ってくれた。
「まぁこれでも受験生だし、今はそんな事してらんないけどなー」
とか言いつつ勉強する素振りを見せない兄の体たらくを見て、こんな人間にはなりたくないなぁとつい思う。
兄を本気にさせる子はどういう子なのだろう。
きっと可愛らしい子なのだろう。兄の好みから言って黒髪の清楚なタイプだろうか。
鏡を見て、自分とは正反対だなきっと、と苦笑。
好きだよ、と一言言えれば良いのに。
もうずっとこんな不毛な恋をしている。
ふたつ違いの義兄。学校は違うけれど、毎日途中まで一緒に通って。
僕がせめて女だったら、義妹だとしても、告白は出来たのに。
「どうかした?」
気付くと兄が僕の顔を覗き込んでいた。
「…ううん。なんでもない」
我慢に我慢を重ねていつか僕は壊れてしまう気がした。
この想いは幸せな家族をも壊すこともわかっていた。
「兄ちゃん、 好き だよ」
「え?なんか言った?」
「…ううん。なんでもないよ」
僕はもうひとつ、嘘を重ねた。
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