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戯言私信
絵をかいたり日記だったりまぁとにかく色々かきます。
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2007-03-24 [Sat]
卒業してどれだけ経ったと思ってるの。きっとそう言って頬を膨らませて拗ねて見せて、俺が困ってるのを見て仕方ないなぁ、て笑うんだ。きっと。彼ならば、そうきっと。

すきだと告げられたのは忘れもしない、中学三年の終わりで、返事は卒業までに欲しいと言われた。
俺は彼を友達とすきでなによりも一番の親友だと思っていて。そう言われた事がすこし悲しくてだけども何処か自分は気付いていた節があったことは否めない。
どうせならば気付きたくはなかった。このまま卒業して違う高校通って時たま連絡を取れたら良いと思っていた。
臆病な彼に告白の決意をさせたのも自分だ。わかっていたんだ。
その悲しそうに微笑むのも心から嬉しそうに笑うのも俺の為であって俺の所為だということくらいは。
「卒業したら」
「うん?」
「どうすんのお前」
「・・・・」
卒業したら彼の迷う姿を見なくて済むのだろうか、卒業したら俺は自分に正直になれるのだろうか。
そうだよ、俺は彼が俺をすきだということに気付きたくなかったのではなく俺が彼をすきなのだと気付きたくなかた。こわかったんだ。許されない選択を無意識にしたことが。
「俺ね、卒業したら」
「うん」
「日本を出るんだ」
え?
「だからやっぱり言っとく。  ずっと、すきだったんだ よ。友達としてだけじゃなくて」
彼はたどたどしく笑い方を探してるように歪に笑んでみせて、
「恋愛として」
ごめんね、返事はそんなに急がなくていいから、と震える足で一歩一歩俺から離れてゆく。心も遠くへ。
「ありがとう」
震えてる声。コンクリートへ溶ける涙。
「友達になってくれて」 ごめんねそれを壊して。
彼の最後の言葉を俺は、上手く聞き取れなかった。

「ごめんなツナ」
あの時からもう二年は経っていて俺は返事もせずに逃げてきた。そのツケが回ってきたとしか思えない。
あれから二年。二年しか経っていなくて彼は随分と変わったものだと遠くから目を細めてみつめる。
卒業してすぐにイタリアに渡ったツナは命をかけて守ったボンゴレのボスとしての特訓を向こうで受けていたのだと聞いた。 俺はというと、適当に進学して彼女もつくったりまぁまぁ快適な生活をしていた。
ふと 我にかえると お前は今幸せかと訊くヤツがいる。
俺のかたちをしていて俺の口調をしていて俺とは違う厳しい目つきで 幸せかと訊ねる。
「幸せじゃあないさ」
だって隣に  がいない。
「幸せになんてなるもんか」
だって  の想いを踏みにじっておきながら。
覚えていてくれるだろうか。俺が逃げた卒業の日。きっと君は屋上で待っていてくれた。
今更行ってなんになると、去年はそう思って行かなかったけれど。今日は。
「―――――おい、いるか山本ぉ!」
突然の来客に一瞬誰だかわからなかった。銀髪、険しい目つき、煙草。
「獄、寺?」「貴様今年も行かなかったら殺すぞ!」「は?ちょっと待ってくれよ」
会ってそうそう胸倉を捕まれて何を言っているのか理解出来ていない俺に獄寺は眉を顰めながらもいちからきちんと説明してくれた。
中三の頃の卒業式の日のこと。それからのこと。去年の卒業の日のこと。今のこと。
「十代目を傷付けたら容赦しねぇ」
そういって獄寺は話しを帰結させた。
「そっか」 ツナ、君はどうしてそんなにも

「ふぅ」
中学三年の今、あの時もこうやって彼を待っていた。来ないことを祈りつつ。
返事はなるべく聞きたくなかった。当たり前だこわいんだから。
もし彼が忘れていなかったら、来てくれるんじゃないかと思ってここにいる。毎年。
「ふふ、でもきっと来年からは来れないんだろうな」
春がきたら俺は十代目として就任する。そうなったら自由に日本に帰ってこれるはずない。
「今日もしきてくれたら」
返事がどっちであったとしても
「さよならになるかもしれない」
それでも良い、と彼は小さく笑った。

待ち人の足音が聞こえるまであともう少し。


04.例えば恋を忘れていなかったら    猛毒マリアさま
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