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戯言私信
絵をかいたり日記だったりまぁとにかく色々かきます。
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2007-04-07 [Sat]
小さなお墓があった。
よく見ないと見逃してしまいそうで、実際気付いたのは最近だった。
自分も死んだらこんなに小さくなるのかと思った。
神よ。 我を、憐れみ給え。

「ありがとう圭一」
小さく笑んで彼に緩やかな拒絶を示した。
「え…悟史、でも」
「僕なら大丈夫だよ」
圭一は僕の面倒をよく見てくれる。圭一にとって唯一の同年代の男だからだろうか。目覚めた僕に友達になって欲しい、と言われたのはとても嬉しかった。嬉しかった、のだけど。
自分は罪深い人間だ。
記憶は曖昧だけれどきっと僕は…叔母を殺した。
夢を見るんだ。あれだけ好きだった野球のバッドで昏倒させ動かなくなっても殴りつけた。これでもか、これでもかと。
圭一は、綺麗だ。
穢れていない。…いや、圭一が過去に何をしたのかくらい知ってる。それでも彼は綺麗に思えた。
「圭一。あれ、見える?」
「…?なに? ………墓か、あれ?」
「うん」
動物のお墓のように見えた。人間用だったらもっと大きいし何よりこんな所に無造作に墓をつくれる訳ない。
「ぼくも、」
「―――――悟史、もう寝ろよ。まだ体調良くないんだろ。この前の風邪ぶり返すぞ」
圭一が意図的に、僕の言葉を遮った。初めてだった。何か強い意志がそこには篭もっていて「…うん」とだけしか頷けなかった。そして同時に彼は寂しそうに微笑んだ。
「ひぐらし、が」
「え?」
「ひぐらしがいるから、寂しい思いはしないんだ、俺。 昔をよく、思い出すけど」
「けいいち」
「俺は忘れちゃいけない。何をしたのか。でも、……こんな事を言うのは卑怯、というか、ずるいかもしれないど…、でも俺だって幸せになりたかっ…た。 前の学校では俺ずっと一人で夏はよく蝉の鳴き声聞いてた。ひぐらしも。あんな思いは、もう嫌なんだ…っ」
過去の思いを吐き出す彼はやっぱり、…美しかった。とても、とても強かった。
「しにたいと、思ったことだってあるよ…!消えてしまいたかった!俺は存在しちゃいけないと思ってた。 でも同時にどうして俺が消えなきゃいけないんだろうと思ってた。あいつらがいけないんだって。あいつらがバカだから俺を理解出来ないだけ。この俺を蔑むなんて許さないと…思ってた。 ころしたい、と思ってた」
「うん…うん」
僕も。沙都子を苛める叔母。憎い叔母。僕に助けを求める沙都子。二人ともいなくなれば良いとさえ思った。
沙都子はまだ幼かったのだから兄である僕に頼るのは当たり前だ。なのに。
「俺、悟史の気持ちわかるよ」
「…だろうね」
初めから気付いていた。似たものが僕達にあること。だから惹かれ合うのも理解していた。
「だから、悟史に言って欲しくない。さっき…死にたい、って言おうとしただろ」
涙目で睨まれて僕は小さく首肯した。
叔母がいない。沙都子は僕がいなくても元気にやっていて。詩音が沙都子と仲良くて。レナは変わらず優しい。魅音はやっぱり頼れる奴で。梨花ちゃんが沙都子と生活を共にしている。圭一は…呆れるほど良い奴でしかし一歩間違えれば闇に呑まれそうな、どこか影のあるひとだった。
その皆の輪に自分は酷く恐れていたのだ。自分がいなくても大丈夫な気がした。
「僕は誰に望まれて目を覚ましたんだろう」
生涯眠っていても仕方の無いくらい重症だった。入江には奇跡だと言われたくらいだ。
「皆だよ。そうだな、特に沙都子と詩音。皆お前が起きるの待ってた」
「そうかな…」
「俺だって早く悟史に起きて欲しかったんだぞ?どんな目してんだろうとか、どんな声なんだろうとか、どんな…どんな奴なんだろうって」
「…」
「悟史、俺は

お前をずっと待ってた」

俺はずっと不思議だった。出逢った事もないのに昔から彼を知っているような気がした。どこかで繋がっているような気がした。
死んだと思っていた彼は実は生きていてずっと眠っているのだと聞いた時言い表せられ無い程嬉しかった。
早く起きて欲しい。
この気持ちを伝えたい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この、気持ち。
夢みたいな不安定でくすぐったい気持ち。
おかしいかな、知り合ったばかりなのに。
「悟史、俺は――――――――――」


例えばあいしてると言えたなら
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