2007-03-02 [Fri]
束縛しようとしたのはいつからだったか何故だったかどうしようと思っていたからだったか覚えていない、けれど。
どちらが束縛していたのかだなんて、 解るはずもない。
「うっ、ゲホゲホ…っ!ぐ、んぅ…ッ」
ザー、という水音。吐瀉物。暗い。世界が暗い。あれ今深夜だったか。なんで俺ここにいるんだっけ。
仕事だったっけ、そう、女と寝る、仕事。愛なんて嘘のように転がってる世界だ。金さえ積めば愛も買えるのだろう。なんて素晴らしい世界だろう。滅べば良いのにな。
疲れた。
すごく疲れた。
「時任、」
どうして俺はお前以外を拒絶してしまうのだろう。
「おかえりくぼちゃん」
にこにこ満面の笑みで出迎えた猫は腕を伸ばし俺にしっかりと抱きつく。「おかえりどうだった」
「どう、って…別に、何も感じない…」
「そう」ふふ、と微かに笑い声が風に乗って聞こえた。笑ってる、時任が。
「時任こそ、」「うん?」「家から出てないよね」「あぁもちろん」
まだ暗かった。朝方だろうとは思うけれどまだ世界は暗かった。少なくとも俺の世界はこんなにも。
「…くぼちゃんはさ、僕じゃない人が好きだよね」
「何、言って、」
「でも僕の事は一番に好きなんだよね。ふふ、知ってる」
「…うん……」
「一番に好きっていう感情よりも傍にいなきゃいけない、ていうか。簡単に言えば僕なしじゃ生きていけないっていうか。かわいそうなひと」ふふ。ひどく綺麗に微笑む時任は抱きたい程美しく殺したいほど憎らしく。
細くしなやかな脚を持って玄関先だと言うのに俺は本能的に彼をゆっくり押し倒した。酷くゆっくりと。
廊下はひやりとする。世界が静かだ。あれ、俺は生きているのか。
「食べるの」
簡潔に問う時任は焦りも見せずくすくすとまた嗤う。
「うん、時任が、俺から離れないように。俺を、嫌わないように」
「僕が?」
ふと、きょとん、と時任が目を丸くする。しかしすぐに「あははははは!」狂ったように無邪気に高らかに笑う。
「何言ってるの!」
涙目の時任。あぁ愛しい。あぁ憎らしい。
―――――くぼたさん、
好きなのは君だっけ それとも
―――――くぼたさん
…あの、純粋な瞳をした子犬だっけ。
「ほんっとかわいそうなひと」
君は俺の何?
「大嫌いだよ君なんか」
それでも俺は君が好きで、
「でもその分好きだよあいしてる」
俺は君に救われたい。
「僕しか愛せない体のくせに他の人が好きなんだね、かわいそうに」
そっと抱擁した時任の腕はかよわくて細くて折れてしまいそうで。なのに何故かちぎれない鎖のようにずしっと重かった。
どちらが束縛していたのかだなんて、 解るはずもない。
「うっ、ゲホゲホ…っ!ぐ、んぅ…ッ」
ザー、という水音。吐瀉物。暗い。世界が暗い。あれ今深夜だったか。なんで俺ここにいるんだっけ。
仕事だったっけ、そう、女と寝る、仕事。愛なんて嘘のように転がってる世界だ。金さえ積めば愛も買えるのだろう。なんて素晴らしい世界だろう。滅べば良いのにな。
疲れた。
すごく疲れた。
「時任、」
どうして俺はお前以外を拒絶してしまうのだろう。
「おかえりくぼちゃん」
にこにこ満面の笑みで出迎えた猫は腕を伸ばし俺にしっかりと抱きつく。「おかえりどうだった」
「どう、って…別に、何も感じない…」
「そう」ふふ、と微かに笑い声が風に乗って聞こえた。笑ってる、時任が。
「時任こそ、」「うん?」「家から出てないよね」「あぁもちろん」
まだ暗かった。朝方だろうとは思うけれどまだ世界は暗かった。少なくとも俺の世界はこんなにも。
「…くぼちゃんはさ、僕じゃない人が好きだよね」
「何、言って、」
「でも僕の事は一番に好きなんだよね。ふふ、知ってる」
「…うん……」
「一番に好きっていう感情よりも傍にいなきゃいけない、ていうか。簡単に言えば僕なしじゃ生きていけないっていうか。かわいそうなひと」ふふ。ひどく綺麗に微笑む時任は抱きたい程美しく殺したいほど憎らしく。
細くしなやかな脚を持って玄関先だと言うのに俺は本能的に彼をゆっくり押し倒した。酷くゆっくりと。
廊下はひやりとする。世界が静かだ。あれ、俺は生きているのか。
「食べるの」
簡潔に問う時任は焦りも見せずくすくすとまた嗤う。
「うん、時任が、俺から離れないように。俺を、嫌わないように」
「僕が?」
ふと、きょとん、と時任が目を丸くする。しかしすぐに「あははははは!」狂ったように無邪気に高らかに笑う。
「何言ってるの!」
涙目の時任。あぁ愛しい。あぁ憎らしい。
―――――くぼたさん、
好きなのは君だっけ それとも
―――――くぼたさん
…あの、純粋な瞳をした子犬だっけ。
「ほんっとかわいそうなひと」
君は俺の何?
「大嫌いだよ君なんか」
それでも俺は君が好きで、
「でもその分好きだよあいしてる」
俺は君に救われたい。
「僕しか愛せない体のくせに他の人が好きなんだね、かわいそうに」
そっと抱擁した時任の腕はかよわくて細くて折れてしまいそうで。なのに何故かちぎれない鎖のようにずしっと重かった。
PR
COMMENT